皆さんは「クラウド化」の意味をご存知ですか?近年、テレビやインターネットなど様々な媒体で使用される機会が増えている単語ではありますが、IT業界に所属しているビジネスパーソンですら、なんとなく理解しているだけで正確な意味は説明できないという人かなり多いと思います。そこでこの記事ではクラウド化とは何かを解説し、業務のクラウド化を考えている企業に向けて導入の際の注意点を紹介します。
【この記事の内容】
クラウド化が何かを説明する前に、そもそも「クラウド」とは何かを説明します。クラウドとは、ユーザーがサーバーやソフトウェアを持たなくても、インターネットを通じて利用できるサービスや考え方のことを指しています。具体的に言えば、以前のoutlookのようなメールサービスは利用するために専用のソフトをパソコンやスマートフォンにインストールしなければ機能しませんでした。一方、クラウドサービスはインストールの必要がありません。GmailやYouTubeのようにインターネット回線やGoogle Chromeなどのブラウザさえあれば利用することができるのです。
つまり、上記を踏まえてビジネスにおける「クラウド化」が何を示しているのかというと、自社で設置しているサーバーを利用した既存のシステムなどを、他社が提供するクラウドサービス(サーバー)を利用する方式に移行することを指しています。
近年では様々な業務にクラウドサービスを取り入れる企業が増えており、総務省の発表した「通信利用動向調査」によるとクラウドサービスを一部でも使用している企業の割合は2019年時点で64.7%に達しており、2015年の約44.6%と比較すると20%も増加していることがわかります。
余談ですが、クラウドの反対語として「オンプレミス」という言葉もあります。オンプレミスとは、サーバーやネットワークなどの IT インフラを自社で用意して運用する形態を指します。オンプレミスの場合、自社内で管理・運用を行うので、カスタマイズの自由度が高いのが特徴ですが、その分システム構築の知見や自社内で設置場所の確保、専任の管理者等が必要になります。
近年、企業のクラウド化が急速に進んできている状況ではありますが、まだまだ移行に踏み切れない、または業務の極一部しかクラウド化できていないという企業も多くあると思います。そこで自社に適しているか判断するためにもクラウド化のメリット・デメリットを把握しておきましょう。
クラウド化の一番の利点として、自社でサーバーなどを用意する必要がなく、他社のサービスに申し込むだけですぐに利用が可能なため、導入コストや開発コストを抑えられることにあります。また、自社のサーバーを使用する場合、運用保守担当者として専門スキルを持つ人員を雇用しなければなりません。担当者がいない場合は結局外部に委託するなどしなければいけないので、余計なランニングコストもかかります。クラウドサービスなら、基本的にかかる費用はサービスの定額料金だけです。
クラウドサービスはいうなれば、すでに作成されたシステムを購入するため、契約後すぐに利用できます。自社でシステム開発するとなると、利用開始までに数か月間かかることも珍しくありません。ビジネスにおいてスピードは重要ですから、この差は大きいと言えるでしょう。速やかに社内システムを見直す必要があるときは、なおさらクラウド化を進めることをおすすめします。
場所を選ばずにサービスが利用できるのもクラウドサービスの利点です。自社サーバーの場合、基本的にはオフィスの外からアクセスすることができません。一方、クラウドはたとえ自宅や遠隔地にいてもインターネット回線とパソコンなどのデバイスさえあればオフィスと同様にアクセスできます。特に昨今テレワークが増えている現状を考えると、従業員が無理に出社する必要もなくなるため、場所を選ばずに利用できるというクラウド化のメリットは大きいと言えます。
クラウドサービスは、場所を選ばないのは先ほども述べたとおりですが、サービスによっては離れた場所にいる従業員同士が同時に共同作業することも可能です。また、対応している端末も多く、パソコンだけでなくスマートフォンやタブレットでも利用できるため、各々の環境を気にせず仕事ができるようになるのも大きなメリットです。
クラウドサービスはすでに他社が商品化しているシステムを利用するため、ユーザー側でのカスタマイズ範囲に限度があります。自社に最適化した環境を重視する場合は、クラウド化の導入には慎重になったほうがよいでしょう。
根本的なことですが、クラウドサービスは提供元のサーバーにインターネットを使用してアクセスするため、オフライン環境では利用できません。また、回線速度が遅い場合や接続が不安定になっていると満足に使えないことがあります。万全の態勢でクラウド化を進めるためにも安定したネットワーク環境の整備が大切です。
クラウドサービスはシステム運用を他社に任せきりにできる代わりに機能アップデートで使いにくくなったり、利用料金が上がった場合も、自社から口出しすることができません。さらに注意したいのは、他社がクラウドサービスの提供を停止した場合です。多くの場合事前に告知があると思いますが、そういった事態を想定してデータのバックアップなどを取っておくことをオススメします。
先ほどのメリット・デメリットを踏まえて、自社の業務システムや基幹システムのクラウド化がどれほど進んでいるかが分かるチェックリストを作成しました。皆さんの会社はいくつ当てはまるでしょうか?
・メールや電話より、チャットツールを使ったコミュニケーションが盛んだ
・対面営業より、オンライン会議ツールを利用した営業手法が盛んだ
・押印や署名などの業務が家からでも行える。
・他の社員の予定やどんな業務を行っているかがWEB上で可視化されている
・ExcelやPDFなどの様々なデータ共有がスムーズにでき、いざという時にすぐ目当てのファイルが見つけられる
・紙で行っていた作業のペーパーレス化が進み、職種によってはテレワークできる環境がある。
上記の項目が4つ以上当てはまった場合は「クラウド化できている」と言えるでしょう。
会社業務においてクラウド化によって受ける恩恵は計り知れないものがあります。しかし、少ないながら、中にはクラウド化が適さない業務も存在します。業務の中にもクラウド化できるものとできないものがあるのです。
社員が業務において頻繁に利用する、メールやタスク管理・ファイル共有・スケジュール調整などのクラウド化はすでに多くの企業が行っています。特にこれらの業務をクラウド化することにより、スマホなどを利用してどこからでも情報共有が行えるようになることが大きいです。また、2019年に総務省が実施した「通信利用動向調査」によるとクラウド化を進めている企業の内およそ半分以上が情報共有の強化を目的としていることが分かっています。裏を返せば多くの企業が情報共有を自社の課題としているという意味でもあり、コストや業務効率という面で課題を抱えている企業は、第一に情報共有のクラウド化を考慮に入れるべきでしょう。
社員が主に行う業務などは簡単にクラウド化できることが分かりました。一方、どういったものがクラウド化に向かないのでしょうか。
銀行の会計や財政業務をはじめとした、高度なセキュリティが求められる基幹システムではクラウド化が進んでいない現状があります。銀行では現行のシステムを一時的にも止めることが難しく、万が一にもデータ漏洩が有ってはいけないということなど様々な問題があり、これらはなかなか導入が進んでいない原因として挙げられるでしょう。
業務のクラウド化には業務フローの明文化や標準化、データの整理など、クラウドシステムに適応するように業務フローの再構築を行う必要があります。しかし、業務自体にケースバイケースな部分が多く、従業員本人の経験則や技量に拠る部分が大きい場合、無理にクラウド化を推し進めるとむしろ多くの問題を招き、効率の悪化を招くことも少なくありません。
言うまでもないかもしれませんが、接客や工事現場作業員、研究員など実際にその場に赴いて手を動かさければならない業務などは、そもそもクラウドが介入する余地がない場合がほとんどですので、クラウド化できない業務と言えるでしょう。
さて、ここまでクラウド化について解説してきました。本格的に業務クラウド化に乗り出そうと考えている皆様に向けて導入までの流れを解説していきます。
最初にクラウド化したい業務、そしてクラウド化の目的を明確にしておくことが大切です。先ずは、自社の抱える課題をすべて洗い出し、課題に優先度をつけていきましょう。そして、どのサービスを導入して、どれほどのコストが削減できるのか、どれほど業務効率が上がるのか、徹底的にサービスの料金体系や概要を調査し、具体的な目標値を出しておくことをオススメします。そうすることでより今後の計画が立てやすくなります。
調査と洗い出しにより、どの課題を解決するのか、どのクラウドサービスを導入するのか見当がついたところで、クラウド化したい範囲を決めます。たとえば、セキュリティの観点から社外秘の資料を他社のサービスで管理したくないという企業もあると思います。また、業務においても、どこまでクラウドサービスを使用して、どこまで社内システムを使うのかなどの住みわけをしておく必要があります。ここまでの作業がしっかりとできていないと、いざ移行する際に様々な問題が発生する可能性があります。クラウド化の前にたっぷりと準備期間を設け、綿密な計画を立てましょう。
いよいよクラウドに移行していきます。ここで大切なのは、現行のシステムからクラウド移行によって変更が生じる部分を社内で共有しておくことです。特に実際に業務を行う社員には講習会を開くなどして、クラウド化によって生じるメリットや利用方法などをしっかりと説明しておきましょう。ここをおろそかにすると、せっかく時間やお金をかけて移行したのに、社員に定着せず失敗に終わります。最後までしっかりとサポートしていきましょう。
クラウド化が完了した後は、クラウド化によって実際どれほどのコストが削減できたか、業務を効率化できたのか事前に立てた目標と比較して効果検証を行っていきます。時には、以前よりコストがかかってしまっている場合もあるでしょう。そんな時は必ず原因を究明し、改善施策を実行していくことが大切です。クラウド化に大切なのは、導入しっぱなしではなく常に検証・改善のサイクルを組んでメンテナンスを怠らないことです。
一部、業務クラウド化の流れでさらっと解説した部分ではありますが、本項ではクラウド化移行の際に注意すべきポイントをあらためて詳細に解説します。
クラウド移行後、社内で定着する前に「時間がかかる」「効果がない」などの理由からクラウドサービスが使われなくなるケースが多々あります。使い方の講習会を開きたくてもどうしても時間と手間がかかります。こういった問題を解決する方法として、「スモールスタート」が挙げられます。具体的には、まずクラウドを利用しやすい部署で先に導入し、利用方針や操作方法などをある程度固めてから徐々に社内全体に展開していくというやり方です。スモールスタートは導入時のコストを抑えられるため、失敗しても傷が浅く済みます。また、本格導入する前に検討する猶予が生まれるためよりスムーズに移行できることが最大のメリットです。
クラウドサービスは定額の月額制+従量課金制のサービスがほとんどの為、毎月必ず一定額のランニングコストが発生する料金体系になっています。導入コストがかからない代わりに、月々のランニングコストが思ったより高くつき、導入をやめてしまうという企業も少なくありません。こういった問題を回避するためにも、あらかじめ自分たちの解決したい課題を明確にし、導入するサービスの調査を行うことが大切です。中には高機能すぎるサービスを使いこなせず無駄な費用を払っているという場合もあります。料金体系や機能を中心に綿密なリサーチを行いましょう。
一度に全ての業務システムや基幹システムをクラウド化する企業はほとんどありません。 基本的には、どこまでクラウド化するかの範囲をあらかじめ決め、少しずつクラウド化を進めていくことがほとんどです。その場合、クラウドとオンプレミスを両立させなければいけません。ここを曖昧なままに移行を進めると、どちらも中途半端に終わり、業務効率の悪化を招くことになりかねません。そこで、クラウド化する部分とオンプレミスで運用する部分を明確にした上で、あらかじめ運用方法をしっかりと定めることが大事です。
クラウドサービスは、インターネットを経由してどこからでもアクセスできる利点がある。
一方で、不正アクセスや情報漏洩の問題が起こる可能性もあります。そういった場合サービスによってはIPアドレス制限などをおこなって、アクセスできるユーザーを制限するなど何らかの対策を行う必要があります。しかし、クラウドサービスの最大の問題として、自社でどれほど厳重な対策を行ったとしても、サービス提供事業者がサイバー攻撃を受ける場合があり、突然不具合や情報漏洩が発生する可能性は0ではありません。そういった点を踏まえて、クラウドとオンプレミスの住み分けを改めて考える必要があります。
最後に、業務のクラウド化に一役買うツールとしてオススメしたい当社のサービス『Shelter』をご紹介します。『Shelter』は誰でも簡単に自社の業務に適したアプリを作成できる業務効率化ツールです。今まで各人がメールや紙、エクセルで管理を行っていた業務は全て『Shelter』で一元管理することができます。また、業務を進行する上でのちょっとしたコミュニケーションも、わざわざメールや電話などせずとも『Shelter』上の連絡スペースでチャット感覚にコミュニケ―ションが可能です。
上記のような業務システムへの置き換えだけでなく、人事管理などの基幹システムに利用することでき、会社ごとにカスタマイズも可能となっています。
『Shelter』についてより詳しい情報を知りたい方は下記公式サイトをご覧ください。
《『Shelter』公式サイト》
《『Shelter即効アプリシリーズ』》
お読みいただきありがとうございました。本稿では「クラウド化」の重要性について紹介いたしました。最後に今回紹介した内容をおさらいします。
以上となります。クラウド化はコスト面においても、業務効率の面でもプラスに働くことが多いでしょう。特に情報共有業務においてはクラウド化できているかどうかで、業務効率の面でかなりの差が生まれます。まだ、クラウド化できていない場合は、自社の課題としっかり向き合いながらクラウドサービスの導入を検討してみることをオススメします。