製造業界にRPAを導入するメリットとは?成功事例と活用ポイントを徹底解説!

近年、業務の効率化や自動化を目的に、RPAの導入が進んでいます。
とくに、人手不足や業務負担の増加が課題となる製造業では、RPAへの関心が高まり、導入を検討する企業が増えてきました。製造業には正確性と効率が求められる業務が多くありますが、RPAを活用することで、作業時間の短縮や人的ミスの削減などが期待できるようになります。
そこで本記事では、製造業におけるRPA導入のメリットや成功事例、導入時のポイントについて詳しく解説します。RPAの活用を検討している企業の参考になれば幸いです。
【この記事の内容】
そもそもRPAとは?

RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)は、ソフトウェアロボットを活用して、人間が行う定型的な業務を自動化する技術です。業務の効率化やコスト削減、ヒューマンエラーの防止につながることから、多くの企業で導入が進んでいます。
以下からは、まずRPAの基本的な仕組みや特徴を解説し、その市場規模についても紹介します。製造業においてRPAがどのように活用されているのか、データをもとに詳しく見ていきましょう。
RPAの概要
RPAは、主に以下のような特徴を持っています。
定型業務の自動化 | 人間が手作業で行っていた定型的な業務をソフトウェアロボットが代行します。 |
既存システムとの連携 | 既存の業務システムやアプリケーションと連携し、人間と同様の操作を行うことが可能です。 |
導入の容易さ | プログラミングの専門知識がなくても設定・運用が可能なツールが多く、比較的短期間で導入できます。 |
これらの特徴により、RPAは多様な業種・業界での業務効率化ツールとして注目を集めています。
RPAの市場規模
株式会社MM総研が公表した「RPA国内利用動向調査 2021(2021年1月調査)」によると、2020年度の国内RPA市場規模は約800億円で、前年比約20%の成長を記録しました。
とくに生産管理や在庫管理、品質管理などの分野で活用が拡大しており、人的ミス削減に貢献しています。市場は今後も拡大すると予想されており、2025年度には約1,500億円に達すると見込まれています。AIや機械学習との連携、クラウド型RPAの普及が成長を後押ししている点も注目すべきポイントです。
製造業の課題と現状

製造業界は現在、以下のような課題に直面しています。
- ・労働力人口の減少・市場縮小
- ・設備投資が進んでいない
- ・BCP対策
- ・DX推進
順番に解説します。
①労働力人口の減少・市場縮小
製造業における労働力人口の減少は深刻な課題となっています。厚生労働省の「2023年版 ものづくり白書」によると、製造業の就業者数は2002年の1,202万人から2022年には1,044万人へと158万人減少しました。
とくに34歳以下の若年層の減少が顕著で、同期間で129万人減っています。技術継承の難しさも指摘されており、熟練工のノウハウを次世代に引き継ぐ体制の構築が急務です。総務省の統計では、生産年齢人口は1995年の8,716万人をピークに減少を続け、2022年には5,978万人、2050年には5,275万人まで縮小すると予測されています。
労働力人口の減少に対応するためにも、製造業界は業務の効率化と自動化を積極的に進める必要があります。
②設備投資が進んでいない
日本機械工業連合会が実施した調査によると、多くの製造業者が老朽化した設備を長期間使用しており、金属工作機械や鋳造装置の50〜80%が導入から15年以上経過しています。設備の老朽化が進むと、生産効率の低下やメンテナンスコストの増加につながるため、早急な対策が求められます。
また、古い設備は故障が頻発し、部品の調達が難しくなるケースも少なくありません。とくに、経年劣化による不具合は労働災害を引き起こすリスクがあり、実際に老朽化した設備の使用が原因で発生した事故も多数報告されています。
このような問題を解決するためには、設備の更新や最新技術の導入が欠かせません。RPAを活用することで設備の稼働データを分析し、故障の予測やメンテナンス業務の最適化が可能になります。老朽化設備を適切に管理しながら、生産性向上とコスト削減を両立させることが重要です。
③BCP対策
自然災害やパンデミックなどのリスクに備えるため、製造業における事業継続計画(BCP)の策定は不可欠です。
地震や洪水などの災害発生時には、工場の操業停止や設備の損傷により生産が長期間停止する可能性があります。また、新型コロナウイルス感染症の流行時には、従業員の出勤制限やサプライチェーンの混乱が発生し、多くの企業が生産活動に影響を受けました。
とくに、サプライチェーンの寸断は深刻な問題です。主要部品を単一の取引先に依存している場合、災害や取引先の経営破綻によって調達が困難になり、生産全体が停止するリスクが高まります。こうしたリスクを軽減するため、調達先の多様化や代替供給ルートの確保が求められます。
また、データの消失やシステム障害への対策も重要です。クラウドサービスを活用し、業務データを分散管理することで、万が一の障害時にも迅速な復旧が可能になります。BCPの強化により、企業のレジリエンス(回復力)を高め、事業の持続的な運営を実現することが重要です。
④DX推進
経済産業省の「DXレポート」では、全産業におけるデジタル技術の活用が必要と指摘されています。具体的には、IoTやAIを活用したスマートファクトリーの構築、データ分析による生産プロセスの最適化、サプライチェーンのデジタル化といった取り組みが重要視されています。
これらを推進することで、生産性の向上やコスト削減、品質改善が期待できるでしょう。たとえば、トヨタ自動車株式会社では、工場IoTを導入し、3D CADデータなどのデジタル情報を一元管理できる共有プラットフォームを構築しました。これにより、部署間の連携が強化され、業務の効率化が進んでいます。
DXの推進は、企業の競争力を高めるだけでなく、変化の激しい市場環境への適応力を強化するためにも欠かせません。
製造業におけるRPAを導入するメリット

RPAの導入により、製造業界では以下のようなメリットが期待できます。
- ・定型業務の効率化が実現できる
- ・高精度な検査作業の実現が可能
- ・多拠点運営の効率が大幅に向上する
- ・人材育成の効率化が促進される
- ・設備データの分析が容易になる
- ・サプライチェーン全体の柔軟性が高まる
それぞれのメリットについて、順番に解説します。
定型業務の効率化が実現できる
RPAを導入すると、在庫管理や受発注処理、データ入力などの定型業務を自動化できます。これにより、作業時間の短縮や人的ミスの削減が可能となり、業務の効率も大幅に向上するでしょう。
たとえば、納品書や請求書の処理をRPAで自動化することで、従業員の負担が軽減され、より重要な業務に集中しやすくなります。実際に、ある企業では導入後に月170時間の業務削減を達成しました。
自動化により人員配置が最適化され、結果として生産性の向上につながるのです。
高精度な検査作業の実現が可能
製造業では外観検査や寸法検査など、品質保持のためには厳格な検査体制を整えることが必要です。RPAと画像認識技術を組み合わせると、人間の視覚では見落としがちな微細な不良も検出しやすくなり、顧客満足度の高い製品を継続的に供給できるようになります。
また、近年はAIを活用した画像処理技術が進化し、検査自体のスピードアップも期待されています。
こうした先進技術とRPAを連携させると、熟練検査員の負担軽減だけでなく、データ蓄積による検査プロセスのさらなる最適化が実現しやすくなるでしょう。
多拠点運営の効率が大幅に向上する
多拠点運営の効率が大幅に向上する理由として、RPAによるデータ集約と自動レポート生成が挙げられます。国内外の複数拠点を持つ企業では、在庫や設備の一元管理が不可欠です。RPAを導入することで、データをリアルタイムで取得・可視化し、迅速な意思決定が可能になります。
さらに、集計作業の自動化により統合レポートの作成時間が短縮され、多拠点間の連携もよりスムーズに進むでしょう。
人材育成の効率化が促進される
RPAによって定型作業が自動化されると、若手スタッフや中堅社員はより高度な業務に携われる時間が生まれます。たとえば入力や転記作業に追われていた担当者が、改善策の立案や新しい技術習得に注力しやすくなるでしょう。
熟練工が担っていた一部の定型タスクもRPAが代行するため、技術伝承に時間を割ける環境が整う点も魅力です。業務の効率向上だけでなく、従業員がキャリアアップを実現しやすくなり、企業全体の生産性向上が期待できます。
設備データの分析が容易になる
RPAを介して設備の稼働データやセンサー情報を定期的に収集し、BI(ビジネスインテリジェンス)ツールへ連携する事例が増えています。従来は各担当者が手作業でログを抽出していたため、リアルタイム分析は難しかったです。
RPA導入後はデータ取得からレポート作成までの流れが自動化されるため、異常検知やトレンド分析がスピーディーに行えるでしょう。結果として、故障リスクを未然に把握しやすくなり、予防保全や稼働率向上に役立つと期待できます。
サプライチェーン全体の柔軟性が高まる
サプライチェーンを最適化するうえでもRPAが大きな役割を果たします。受発注処理や出荷指示、輸送手配などを自動化することで、需要予測の変動や突発的なトラブルに素早く対応しやすくなるでしょう。
複数の取引先や倉庫を連携する必要がある場合でも、RPAが各システムからデータを集約してくれるため、人的作業による遅延やミスのリスクが軽減されます。全体を俯瞰できる環境が整備され、リードタイム短縮や在庫適正化に取り組みやすくなる点もメリットです。
製造業でRPAを導入する際の手順

製造業でRPAを導入するには、まず目的と目標を明確にし、小規模なPoC(概念実証)を経たうえで本格運用へ移行する流れが一般的です。以下では、導入手順ごとのポイントを詳しく解説します。
①導入目的の明確化
RPA導入を成功させるには、なぜ導入するのかを社内全体で共有することが大切です。
単にコスト削減や効率化だけを目指すのではなく、人材育成や品質向上など複合的な目標を設定すると効果が最大化しやすくなります。
たとえば「在庫管理の正確性を上げてヒューマンエラーを○割減らす」や「月次帳票の作成時間を○時間削減する」など、定量的なゴールを設定すると導入後の評価や改善がしやすいでしょう。さらに現場の実態を把握するため、担当者へのヒアリングや作業フローの可視化を行い、どの部分を自動化すると最も効果が高いかを検討します。
導入目的が曖昧だと、後々の運用でロボットのシナリオ修正が頻繁に発生し、手戻りも増える恐れがあります。導入前に全社的な合意形成を得て、必要なリソースや期間を確保する段取りが欠かせません。
②事前検証と概念実証
導入目的が固まったら、PoC(概念実証)を実施し、RPAが期待どおりの効果をもたらすかを確認します。小規模範囲でテスト導入を行うことで、不具合や想定外のシステム連携エラーを把握し、早期に対策が打てる点がメリットです。
たとえば、請求書データの自動入力や、受注処理の一部をテスト的にロボット化する方法があります。
導入初期には、ロボットが想定外の画面遷移でエラーを起こしたり、システム更新に追従できなかったりする可能性もあるでしょう。
こうした課題をPoC段階で洗い出し、シナリオ修正や運用ルールの調整を行うことが大切です。効果検証では、作業時間の削減率やミス発生件数の減少といった定量的指標を用いると、経営層や関係部門を説得しやすくなります。
PoCで得た結果をもとに、導入拡大の判断と追加投資の要否を検討しましょう。
③RPAの導入・構築
PoCで有用性を確認できたら、本格導入の段階へ移行します。まずは対象業務の範囲を広げ、シナリオを拡充していきます。ロボット開発時には、現場担当者やIT部門の連携が不可欠です。動作確認を密に行い、運用開始後に想定外のトラブルが起きないよう準備を整えましょう。
並行して、社内へのトレーニングや運用マニュアルの作成にも注力するとスムーズに定着します。導入後は定期的に効果測定を行い、業務フローの変化に応じたシナリオ修正を実施して最適化を継続することが重要です。
製造業におけるRPA導入前に確認すべきこと

RPAを導入する前に押さえておくべき点は、対象業務の選定やセキュリティ、運用体制、費用対効果など多岐にわたります。以下では、導入を検討中の製造企業がとくに確認すべき4つのポイントを紹介します。
- ・費用対効果(ROI)のシミュレーション
- ・業務の適性評価と対象業務の選定
- ・セキュリティと情報管理の整備
- ・運用・保守体制の確立
業務の適性評価と対象業務の選定
最初に検討すべきなのは、RPAで自動化すべき業務の選定です。RPAは繰り返し発生する定型業務に適していますが、例外処理が多い業務は開発・運用の負荷が高くなる可能性があります。
たとえば、購買データの取り込みや在庫登録、定期的な設備稼働レポートの作成などが適用範囲として適しています。一方で、頻繁にルール変更が発生する業務は最初から広範囲に自動化するのではなく、PoC(概念実証)を実施しながら段階的に適用範囲を拡大するのが理想的です。
セキュリティと情報管理の整備
RPAを導入する際には、データの取り扱いやアクセス制御のルールを明確にすることが必要です。RPAは既存システムへ自動ログインし、機密情報を扱うことが多いため、適切な管理体制が求められます。
RPAが操作するアカウントには最小限の権限を付与し、アクセスログを定期的に監視することで、不正アクセスや情報漏えいのリスクを軽減できます。また、VPN接続の活用やデータの暗号化などを併用すれば、より安全な運用が可能となるでしょう。
運用・保守体制の確立
RPAは一度開発すれば終わりではなく、業務フローの変化に応じた保守・運用が欠かせません。導入後に発生するエラーやシステム更新による影響に対応できるよう、適切なサポート体制を構築することが求められます。
たとえば、専任のRPA管理者を設置し、シナリオの調整やトラブル対応を行える体制を整えておくと、スムーズな運用が可能です。外部ベンダーのサポートを活用する場合でも、定期的なメンテナンス契約を締結し、長期的に安定した運用を図ることが重要です。
費用対効果(ROI)のシミュレーション
RPA導入の意思決定を行う際には、投資対効果を定量的に評価することが欠かせません。RPAによる作業時間の削減を時給換算し、年間のコスト削減額を算出することで、導入の経済的メリットを可視化できます。
加えて、導入コストや保守費用と比較し、ROI(投資利益率)を試算することで、経営層への説明が容易になります。導入後も定期的に効果測定を行い、新たな自動化対象の発掘や改善策の立案につなげることで、継続的な業務効率化が実現できるでしょう。
製造業のRPA活用事例4選

ここからは、実際にRPAを導入して業務効率化や品質向上を実現している製造企業の事例を4つほど紹介します。購買管理や日報作成、クレーム対応など、多岐にわたる活用例を確認します。
自動車部品製造業のケース:購買業務の効率化を実現
大手自動車部品メーカーでは、購買管理業務の効率化を目的にRPAを導入しました。従来は担当者がエクセルとメールソフトを行き来しながら対応していたため、入力ミスや送信漏れが課題でした。
しかし、RPA導入後は作業時間が40%削減されただけでなく、納期管理の精度も向上。購買部門全体の負担軽減に成功し、業務効率が向上しました。
化粧品製造業のケース:社内開発による業務効率化を推進
無添加化粧品の製造・販売を行う企業では、業務効率化の一環としてRPAを導入しました。各部署が主体となって開発を進めた結果、年間約6,700時間分の人的リソースを削減。製造、EC販売、直営店業務など幅広い領域で活用され、社員がより判断を要する業務へシフトできる環境が整いました。
今後はさらなる業務効率化を図り、RPAの活用範囲を拡大していく予定です。
精密機器製造業のケース:クレーム対応の自動化で初動対応を迅速化
精密機器メーカーでは、クレーム対応の一次受付業務をRPAで自動化しました。顧客からの問い合わせメールをAIで分析し、トラブルの種類ごとに担当部署へ自動振り分けする仕組みを導入。
従来はカスタマーサポートの担当者が手作業で仕分けを行っていたため、対応が遅れるケースが多発していました。導入後は振り分け精度が向上し、初動対応のスピードが30%改善。顧客満足度の向上と、対応業務の効率化を同時に実現しました。
家電製造業のケース:試作段階の品質データ登録を自動化
大手家電メーカーでは、試作品の品質データを登録する作業をRPAで効率化しました。これまで担当者が手作業でエクセルへデータを転記し、社内ポータルへ入力していましたが、ヒューマンエラーが頻発していました。
そこで、検査システムとポータルをRPAで連携し、データ取得から登録までを自動化。導入後は入力ミスが大幅に削減され、品質情報の正確性が向上しました。加えて、開発スケジュールの短縮にも成功し、新製品の市場投入を前倒しすることができました。
RPAを導入するなら『おじどうさん』

製造業がRPA導入で成果を上げるには、プロセス最適化とツール運用の両面を適切にマネジメントする必要があります。
そこでおすすめしたいのが、ブルーテック株式会社が提供しているRPAツール『おじどうさん』です。
『おじどうさん』は、製造現場に精通したコンサルタントが現行業務のヒアリングからシステム連携の調整、ロボット開発まで一貫して支援します。
さらに、運用開始後の定期メンテナンスやトラブルシュートまで柔軟に対応できる体制を整えています。DXの一環として業務効率化を目指す企業の方は、ぜひ導入を検討してみてください。
まとめ

本記事では、製造業におけるRPAのメリットや導入のポイント、成功事例について解説しました。人手不足や生産コスト削減、品質維持の難しさなど、多くの課題を抱える製造業でRPAを活用すると大きな効果が期待できます。
定型的業務の自動化によるミス削減と作業時間短縮はもちろん、高度な検査技術やサプライチェーン管理への応用も広がっています。導入前には目的と範囲の明確化、PoCでの検証、セキュリティや運用体制の整備などを入念に行うと安心です。
成功事例を参考にしながら、自社の現場が抱える課題解決にRPAを活用してみてはいかがでしょうか。