テレワーク手当の支給が推奨される理由|課税されるかどうかや支給時の注意点も紹介
2019年に厚生労働省が施行した「働き方改革」により、個人の事情に配慮した「働き方の多様性」が重視され始めました。また、感染症拡大の影響を受けテレワークでの勤務のニーズが急激に加速したのは周知の事実でしょう。
変化への順応の早さが求められる時代になってきており、テレワークの導入においても社員の待遇の見直しも求められています。従来の働き方においては考慮の必要がなかったテレワークの手当など、まだ前例が無いことへの会社としての対応に悩んでいませんか?
本記事では、テレワークの際に支給すべき手当や目安額、注意点に関して細かく解説していきます。他の会社の平均的な待遇などを参考に、それぞれ違う立場の社員に見合った条件がきっと見つかるはずです。適切な待遇を提示し、社員のモチベーションや会社の生産性を高く保つきっかけになるでしょう。
テレワーク手当とは?
「そもそもテレワーク手当(在宅勤務手当)はなぜあるのか」「提供しないといけないものなのか」と疑問に感じた方のために以下2点について紹介していきます。
- テレワーク手当が普及している背景
- テレワーク手当は支給しなくてはいけないのか
具体例を使って紹介していきますので、ぜひ参考にしてください。
①テレワーク手当が普及している背景
いざテレワークの導入が決まったとしてもテレワークが可能な部署もあれば、出社の必要がある部署もあります。個人情報を取り扱ったり、経理など紙ベースの書類へのアクセスが必要な部署などが出社を要する一例です。
このように「テレワーク組」と「出社組」ができてしまうと、従業員としては「不公平だ」という感情が生まれやすくなります。たとえば、出社をしている従業員は、電話や郵便物の対応や不在者への伝達などの余計な仕事が生まれることになるからです。
逆に、テレワークをしている社員は「サボっていると思われないか」「情報をシェアしてもらえていないのではないか」「自宅で働く環境を整えるコストが気になる」といった不満を抱えやすくなるでしょう。こういった不公平感を緩和するためにテレワーク手当を支給する企業が増えています。
また、他部署がテレワークにシフトしているなか、対応できない部署の社員に対しての出社手当の支給も広まっているようです。
②テレワーク手当は支給しなくてはいけないのか
テレワーク手当は、支給しなくてはいけないという義務はありません。ただ、支給することで社員のモチベーションを高く保つという意味では推奨されます。
テレワークと聞くと「自宅で気ままに仕事」というイメージが先行してしまいますが、社員にとっては新たな負担としてのしかかる場合があります。もともとは仕事をする場所ではない自宅に、高速の通信環境・パソコン・デスク・チェアなどをそろえなくてはいけません。
また、インターネット回線に加えて今までは必要のなかった、日中のエアコンなどといった水道光熱費などの想定外の支出も新たに発生します。これらすべてを社員が自腹で払うことになると、大きな負担となります。
また、もともと出社を基本に入社したのにもかかわらず、テレワークという変化を強いられストレスを感じている社員もいるでしょう。
このような不満が徐々につのると、仕事に対する意欲が薄れてしまいかねません。「会社から手厚く面倒見てもらっている」と思える環境が、社員の愛社精神や忠誠心を育てるのは言うまでもありません。
長期的な目で見ると、テレワーク手当を支給し社員へのしわ寄せを払拭することが、結果的に離職率を抑える要因の1つとなり得ます。
テレワーク手当を支給するメリット
テレワーク手当を支給するメリットをまとめると、主に以下の3つがあります。
- 社員の働きやすさを向上できる
- 社内の不公平感を抑えて団結力を維持できる
- 経費削減にもつながる
それぞれのメリットを説明していきます。
①社員の働きやすさを向上できる
テレワーク手当を支給することで社員への負担が軽減され、社員の職場に対する満足度は上がります。言わずもがな、職場への好感度は仕事への態度に表れるものです。たとえば家が仕事ができる環境ではなく、どうしてもレンタルオフィスの利用が必要な場合など高額な出費になる可能性があります。
テレワーク手当を支給すればこのような社員の負担を軽減できるのです。環境に満足していればモチベーションや生産性が高くなり、成果があがります。そして利益を社員に還元できるという好循環がもたらされます。
②社内の不公平感を抑えて団結力を維持できる
テレワークが可能な社員とそうではない社員との間での不公平感は、コミュニケーションを図る上でも悪影響となる恐れがあります。敵対してしまうと、社員同士の持ちつ持たれつの助け合いがなくなり、最終的に仕事に支障をきたしてしまうかもしれません。
それぞれに見合った手当を支給することで助け合いの関係を維持し、本来の業務に集中してもらいやすくなります。このように、手当の支給は団結力が高まり結果的に経営が安定するというメリットがあるのです。
③経費削減にもつながる
実はテレワーク手当の相場は、通勤手当よりも安いことが多いです。テレワーク手当の財源を新たに確保する必要はなく、通勤手当として支給していた分から捻出できます。
また、テレワークが広まることで今までかかっていたオフィスの光熱費が削減できる可能性もあります。このように、経営者の立場からもメリットがあるのです。
テレワーク手当の支給方法
テレワーク手当支給の意義についてご紹介しましたが、さらに具体的な支給方法についてご紹介します。
社員に支給する方法は以下の2つがあります。
- 現物支給
- 現金支給
それぞれどんな方法なのかや、注意点などを説明していきます。
①現物支給
パソコンなど業務に使用する備品をテレワークの社員に支給する方法です。社員が共通の機材を使うことで円滑に業務を遂行できるという点において、社員数が多い会社などでメリットが大きい方法です。
個人では入手が難しいものを支給できるという利点もあります。また、会社が備品の購入から配送まで手配すれば、社員と会社間での精算などの手間が省けます。そのほか、手当の本来の意図とは違った使われ方を防ぐという意味でも有効です。
ただ、会社の指定や金額の上限があることで、社員が自身に合った物を選べず不満を感じる可能性があります。現物支給の場合は会社の希望と社員の希望をすり合わせ、慎重に選ぶ必要があるでしょう。
②現金支給
おそらく手当というと、現金支給を前提にお考えの方が多いのではないでしょうか。現金支給の場合は、給料に手当分の金額を上乗せする方法が一般的です。この方法は、会社で備品の手配や管理の手間が省け、社員の裁量で使用できるため不満も出にくく多くの企業が採用しています。
ただ、テレワークと関係のないことに使用される可能性は否めません。それを見据えて、疲れにくいデスクやチェアに使うなどおすすめの使用方法を社員に提示し認識を共有するとよいでしょう。現金支給の相場は大体月額3,000円から1万円といわれています。
たとえば、富士通株式会社は月5,000円、株式会社メルカリでは半年分の手当として6万円を支給しています。テレワーク手当の支給額や方法も多種多様です。自社の方針や社員の希望に沿った方法などをいくつか検討し、より自社に合った方法を選択してください。
テレワーク手当を支給する際の注意点
テレワーク手当支給に関しての具体的な注意点は以下2つです。
- 課税について確認・社員に説明しておく
- 支給のルールを明確にしておく
自社のテレワーク手当の検討に活かしてみてください。
①課税について確認・社員に説明しておく
テレワーク手当の導入にあたり、社員に対して課税対象の仕組みを説明しておくことがとても重要になります。基本的には備品の購入代金など実費分を精算する場合は非課税です。
しかし、毎月一定の額で支給を行う場合は給与の一部として課税対象になります。現物支給の場合は課税対象となり、会社から貸与した場合は非課税です。どちらの場合も会社としては経費として計上できるので、収益に変わりはないのですが、社員の手取りには影響が出ることになります。
この点について社員に対して周知しておくことで、不満を抑えていきましょう。また、光熱費や通信費は家族など社員以外の私的な利用も考えられます。非課税にて手当を支給する場合には、業務利用分と指摘利用分を分けて考える必要があります。
非課税分の計算には、国税庁の「在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ(源泉所得税関係)」に明記されている以下の算式を使用します。
業務のために使用した基本使用料や通信料等 =
従業員が負担した1か月の基本使用料や通信料等×その従業員の1か月の在宅勤務日数/該当月の日数× 1/2
ちなみに、国税庁が定めたテレワークの課税対象の指針は2021年1月から適用されています。
②支給のルールを明確にしておく
手当の支給にあたり、ルールを明確にし社員と共通の理解を得ることも重要です。なにが手当の対象なのか、また支給を受けるにはどうやって申請するのかを事前にしっかりと説明しましょう。うやむやにしてしまうと「社員が手当の対象だと思っていた事項がのちに対象外と判明した」などという事態になりかねません。
また、同僚が手当を受け取っているのに「自分は申請方法を知らずに受けられなかった」などのトラブルやクレームにつながる可能性があります。ほかにも気をつけたい一例として、テレワークの切り替え前に通勤定期券の負担をしていたケースが挙げられます。
たとえば、これまで1万円の通勤定期代を受け取っていた社員に対して、これを5,000円の現金支給に切り替えた場合を考えてみましょう。この現金支給の手当は非課税の定期代とは違い、課税対象になります。
そのため実質5,000円以上の収入減と感じられ、快く思わない社員もいるかもしれません。(通勤定期は月額15万円までは非課税)事前に明確にルールを共有することで、トラブルの防止になります。テレワークの移行を急ぐあまりに手当のことは後回しになってたら要注意です。
しっかりとルールを取り決めシェアすることで、社員が不安なく業務に集中できる環境を整えましょう。
まとめ|テレワーク手当を支給して社内の不公平感を軽減しよう
テレワーク手当について紹介しました。テレワーク手当支給が、社員の円滑な職務遂行のサポートになることはお伝えした通りです。もし「テレワーク組」と「出社組」が混在している会社でしたら、社員の士気を保つ意味でも手当を検討してみる価値は十分あるでしょう。
長い目でみて会社の利益にもつながる手当ですので、ぜひこの記事を参考に導入を検討してみてください。また、本記事と関連した内容のテレワークの光熱費についての記事もありますので、より手当について知りたい方はこちらも参考にしてください。