BCP(事業継続計画)って?策定手順や運用ポイントを解説
BCPは聞きなれないと感じる方も多い言葉で、日本語では「事業継続計画」と呼ばれています。
「BCPってなに?」「BCPを策定するメリットは?」「BCPの策定手順や運用のポイントについて知りたい」
本記事では、以上のような疑問を抱えている方向けにBCPについて網羅的に解説していきます。すべて読み終わる頃にはBCPの重要性や策定手順がわかり、実際に策定に取り掛かる準備が完了しているでしょう。
事業を安定的に続けていくためにも、この記事を参考にしてBCPについて理解を深めてみてください。
【この記事の内容】
BCPとは?
BCPとは「Business Continuity Plan(事業継続計画)」の略です。組織が業務の中断に備え、有事の際に対応し回復するために使用するプロセスや手順・戦略の概要を示すものです。
BCPでは「緊急時に何をすべきか」「誰がそれを行うべきか」「どれくらいの時間がかかるか」について詳細に定めます。主に災害時などに業務を続けていくために策定されます。
BCPで有事の際の対応を詳しく決めておくことで、災害などが起こった際でも落ち着いて対応できるようにしておくのです。
BCPを設定する目的とは?
BCPを設定する目的は、障害によって引き起こされる損失を最小限に抑えて、組織の運営を維持できるようにすることです。
BCPでは、仕事をする場所・データのバックアップ・使用する通信システムなど、有事の際に必要なことをすべてあらかじめ決めておきます。BCPを作成することで、組織はあらゆる事態に備えられるため、あらゆる混乱に迅速かつ効果的に対応できるようになります。
業務中断による損失を最小限に抑え、経営を安定させるために不可欠と言えるでしょう。
BCPとBCM・防災との違いとは
BCPとBCMと防災は、予期せぬ障害に備え、それに対応し、回復するための戦略であるという点では似ていますが、それぞれのプロセスの目標は異なっています。
BCPは、組織が障害にどのように対処し、関連する損失を最小限に抑えるためにどのようなプロセスを導入する必要があるかについての計画を作成することに重点を置いていますが、BCMと防災は障害が発生する前にその影響を防止して最小限に抑えることに重点を置いています。
BCMとは?
BCMとは「Business Continuity Management(事業継続管理)」の略です。
組織があらゆる種類の障害に備え、対応し、回復するために使用できるプロセス・方法・ツールのフレームワークのことです。
BCMでは、リスクを洗い出して優先順位をつけたり、リスクによってどのくらい業務に支障が出るのかを分析したり、緊急時には具体的にどう行動するかなどの取り決めを定めます。組織が混乱に直面したときのための体制を構築・維持するのに役立ちます。
災害対策とは?
災害対策とは、災害が発生する可能性を低くする、あるいは災害が発生した場合にその影響を小さくするために組織が用いる一連の戦略です。この戦略には、物理的なセキュリティ・バックアップ手順・暗号化・災害復旧計画などが含まれます。
また、災害防止戦略は、BCPと連動して設計・実施されるべきものでもあります。
企業におけるBCPの策定状況は?
障害による損失を最小限に抑える計画を立てることの重要性が広く認識され始め、徐々に策定する企業が増えています。
NTTデータ経営研究所の調査によると、2020年時点でBCPを策定している企業は36.9%、策定中の企業が21%、策定予定の企業が11%となっています。6割以上の企業が「BCPを策定した方がよい」と判断してそのうちの半分がすでに策定を終えているのです。
災害の多い日本ではBCPを策定しているかどうかで、復興にかかる時間や損失額が大きく変わってきます。安定して業務を継続したいのであればBCPを策定すべきでしょう。
また、BCPは、それぞれの組織の具体的な業務に合わせて作成することでその効果が高まります。つまり、企業は自社のニーズに合わせたBCPを作成し、維持するための方法を検討する必要があるのです。
BCP策定による3つのメリット
BCPの策定は企業にとって以下3つのメリットがあります。
- ①顧客を逃さずに済む
- ②企業イメージ・評価が向上する
- ③被害を最小限に抑えられる
①顧客を逃さずに済む
BCPがあれば、災害時にも事業を継続できるため、潜在顧客が競合他社に移るのを防げます。
災害時にサービス提供が止まってしまうと、問題なくサービスを受けられる競合他社に顧客を取られてしまうことがあります。業務を停止しないようBCPであらかじめ対応を決めておいたり、停止した場合にもすぐに再開できるように準備したりしておきましょう。
また、BCPを策定しておくことで、災害発生後もより迅速に顧客の信頼を回復できます。
②企業イメージ・評価が向上する
BCPを策定しておくと、困難な状況下でも高いレベルのサービスを維持しやすくなります。結果として「あの企業は信頼できる」などという印象を与えられるので、企業の評判を維持できます。
競合他社が業務停止をしている中でもサービス提供ができれば、むしろ企業イメージや評価が向上することさえあるでしょう。
③被害を最小限に抑えられる
BCPの主な目的は、予期せぬ出来事や災害による被害を最小化することです。
考え抜かれた計画をもつことで、ビジネスは状況に応じた迅速かつ効果的な対応が可能になります。被害を最小限に抑え、ビジネスを迅速に回復させることができるのです。
このようなBCPを社内で共有することで、社員の危機管理に対する意識も高まります。危機管理に対する意識が高まれば、災害レベルの危機が起こった際だけでなく、日頃の業務で起こる小さなトラブルへの対応もよりスムーズになるでしょう。
BCPの課題点とは?
BCPを策定することには多くのメリットがありますが、BCPを策定・運用する上での課題もあります。BCPの一般的な問題点としては、以下2つのようなものがあります。
- ①自社に合っていないと意味がない
- ②策定しても機能するとは限らない
①自社に合っていないと意味がない
BCPは、個々の企業の固有のニーズに合わせて作成する必要があります。企業の抱える具体的な問題に対処できるものでなければ、予期せぬ事態が発生したときに効果を発揮する可能性は低くなるからです。
策定時に他社のBCPを参考にするのはよいですが、そのまま流用することは避けましょう。必ず自社の提供するサービスの特性にあわせてカスタマイズするようにしてください。
②策定しても機能するとは限らない
BCPは策定したとしても、実際に計画通りの行動を起こせるとは限りません。
BCPでは想定していなかった事態が発生したり、物資や人手が足りずに行動に移せなかったりする可能性があるからです。
BCPは定期的にテストし、災害時に正しく機能するかを確認することが重要です。また、BCPを利用する機会があった場合には、その反省も生かして新たにBCPを策定し直すようにしましょう。
災害発生時のBCPに沿った復旧の流れ
災害が発生した場合、BCPに沿って以下3ステップにて復旧を試みましょう。
- ①被害状況を把握する
- ②代替手段を実施する
- ③復旧活動に取り組む
①被害状況を把握する
災害が発生したら、まず被害の状況を把握し、影響のある箇所を特定します。影響を受けたインフラ・システム・プロセスはどれくらいかを見極めましょう。従業員の安否確認も忘れないでください。
この評価段階では、被害報告書などの情報を収集し、リソース提供の遅れの可能性を評価し、さらに被害の原因となった可能性のあるその他の要因を判断する必要があります。
情報を集めるためには通信環境を整備したり、従業員同士でコミュニケーションを取れる体制を整えたりしておくことが重要です。災害時でも安心して使えるシステムを導入しておくのが望ましいでしょう。
②代替手段を実施する
被害を評価した後は、事業の早期復旧のために代替措置を実施することが重要です。BCPの策定時に代替措置として利用できる物資や拠点を用意しておくようにしましょう。
たとえば、リモートワークができる環境を整えておけば、従業員の安全を確保した状態で復旧作業に移れるでしょう。
また、このステップでは将来同じ災害が繰り返されることを防ぐための手順の導入も行います。どのように対応したのか・具体的にどんな問題が生じたのかの記録を残しておくことで、BCPの改善に役立ちます。
③復旧活動に取り組む
代替手段で行っていたサービス提供を平常時の業務体制に戻していく段階です。ビジネスプロセスの復旧・システムやサービスの復旧・将来のビジネス運営への混乱を最小限に抑えるために必要なあらゆる変更を実施します。
機材などのハード面とネット環境やデータなどのソフト面の両方から復旧作業をしてくことが重要です。日頃よりデータのバックアップを行うなどして、対策をしておくとこの段階での復旧がスムーズになります。
BCPの構築手順とは
事業継続計画(BCP)を策定する場合、過度に複雑であったり、費用がかかったりすることなく、組織にとってのリスクに効果的に対処するものでなければなりません。
BCPを作成する際には以下4つの手順にて行います。
- ①目的を明らかにする
- ②重要な事業を明らかにしてリスクを洗い出す
- ③リスクに優先順位をつける
- ④実現可能な具体策を検討する
①目的を明らかにする
なぜBCPを策定するのかを明らかにしましょう。経営理念などに立ちかえって考えることで、自社では何を大切にしているのかを再確認でき、より自社にあったBCPを策定できるようになります。
BCPは自社にあったものを策定することで高い効果を発揮するものです。
②重要な事業を明らかにしてリスクを洗い出す
事業の中核となる事業を特定し、リスクの状況を理解し、望ましい結果を達成するために計画が提供しなければならないものを決定します。
BCPでは自社の中核となる事業を優先的に守るように計画をたてます。まずは自社が優先的に守るべき事業を洗い出し、その事業を守るためにBCPを策定・運用することを周知しましょう。
③リスクに優先順位をつける
組織に対する潜在的なリスクの優先順位を決めましょう。災害がビジネスに与える潜在的な影響と、災害が発生する可能性を評価するのです。
どのリスクに最初に取り組むべきかを特定することで、それらのリスクに備えるための戦略を策定してください。
④実現可能な具体策を検討する
最後に、特定したリスクを軽減するための実現可能な具体策を検討しましょう。緊急時対応計画の策定・災害対応のためのシステムやプロセスの開発・災害発生リスクを軽減するために必要な追加措置や技術の導入などを行うのです。
重要なことは対策をなるべく具体的にしておくことです。「災害対応のためのシステムを導入する」といった抽象的なものでなく「災害対応のためにA社の〇〇システムを導入する」などと具体的に決めましょう。
具体的に決めることで緊急時でも焦らずに行動できるようになります。
BCP策定後の運用ポイント
BCPを策定したら以下2つのポイントを意識して運用していきましょう。
- ①効果測定と改善を行う
- ②BCPを社内に浸透させる
①効果測定と改善を行う
BCPを策定したら、その有効性を測定して必要な改善を行うことが重要です。そのために、監査や評価を通じてBCPが有効であること、対応策が最新のものであることを確認します。
地震や火事などの対策として避難訓練を行うように、大災害時などの緊急時に備えた訓練も行うのです。実際に試してみることで「もっとこうした方がいい」という点が見えてきたり「〇〇のシステムはさらに最新型のものが出ているからそちらに変更しよう」と計画が古くなっていることに気付いたりできます。
②BCPを社内に浸透させる
BCPを作成したら、それを社内に浸透させることが必要です。BCPの内容や緊急時の対応について、全従業員に周知徹底させなければ実際に行動できないからです。
社員研修の実施やBCPにアクセスしやすい環境を整えることが必要です。BCPについての研修は定期的に繰り返し行ってください。新入社員への周知をするのと同時に、繰り返し周知することで災害時の対応を抜け漏れなく覚えてもらいやすくなるからです。
また、BPCは社員がいつでも確認できるように保存しておくようにしましょう。
BCPの実施にはコミュニケーション手段の確立が欠かせない
BCPを実施する上ではコミュニケーション手段の確立が欠かせません。連絡が取れなければ業務を進めるどころではないからです。
災害時でも安定して連絡が取れるコミュニケーション手段を確保しておく必要があるため、災害時のコミュニケーションにはビジネスチャットツールがおすすめです。
ビジネスチャットツールならメールのように宛先を入力する必要がなく、より迅速な連絡ができます。また、電話のように1人ずつ連絡する必要もなく、相手の都合のよいときにメッセージを確認できるのも大きな利点です。
もちろん、災害時だけでなく平常時にも役立ちます。電話やメールに代わるコミュニケーションツールとして使用すれば、スピーディーな連絡が可能になって業務効率アップが期待できます。
また、ビジネス専用のチャットなのでセキュリティ性能が高いので安心です。
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まとめ|BCPを策定し、有事の際にも業務を継続できる体制を整えよう
BCPは、緊急事態が発生しても事業を継続させたい企業にとって必要不可欠なものです。BCPを実効あるものにするためには、リスクの洗い出し・対策の立案・計画の策定・計画の検証、計画の見直しなどを行うことが重要です。
また、個々の組織に合わせたBCPを作成し、社内に広く浸透させることでより高い効果を発揮します。これらのステップを踏むことで、予期せぬ事態や不測の事態にも対応できるBCPを作成できるようになるのです。