BCPの策定手順と考慮すべき項目とは?社内に浸透させてうまく運用する方法も紹介
「BCPを策定したいけどどうすればいいかわからない」
「具体的に何について計画をすればいいのかわからない」
「策定方法だけでなく運用時のポイントもあわせて知りたい」
上記のような思いを抱えていませんか?
今回の記事では、BCPの策定手順と考慮すべき項目をくわしく解説していきます。さらにBCPを社内に浸透させて、有事の際に計画に沿った行動を起こせる体制を整える方法も紹介します。
この記事を読み終わる頃には、自社のBCPをどう策定すべきなのかが明確になり、運用時のポイントも理解できていることでしょう。有事の際に自社の利益を守りたい方は、ぜひ参考にしてみてください。
【この記事の内容】
BCPとは
BCP(Business Continuity Planning)とは、自然災害やテロなどの不可抗力によって事業が中断された場合に、企業の存続をどのようにして守るかについて定めた戦略です。また、その戦略を定めるプロセスを指す場合もあります。
事業を中断させる可能性のある潜在的なリスクを特定し、そのようなリスクが発生しても事業を継続できるように対策を練るのです。
BCPを定めておくことで有事の際に素早く対応し、被害を最小限に抑えて自社・関係企業・顧客の利益を守れるようになります。どんな時でも安定した経営をしたい場合には、BCPの策定が必須といえるでしょう。
以下記事ではBCPを策定するメリットなどについて、詳細に解説しています。「そもそもBCPは必要?」「もっとわかりやすく解説してほしい」という方は、こちらの記事も参考になさってください。
>BCPとは?簡単にわかりやすく解説|必要性や策定手順についても紹介
BCPを策定する手順
BCPを策定する手順は以下5ステップです。
- ①基本方針を作成する
- ②中核事業を特定する
- ③リスクを洗い出し優先順位を決める
- ④具体的な対策を検討する
- ⑤BCPの策定
①基本方針を作成する
BCPを策定するためには、まず基本方針を作成する必要があります。基本方針ではBCPの目的・範囲・BCP管理の原則を定義します。BCPの運用の基本となるため、最初に決めるようにしてください。
基本方針には以下の項目を定めましょう。
- ・責任者やメンバーの選定
- ・資金源の決定および確保
- ・物資やソフトウェアの確保
- ・利害関係者へのメリットを提示
責任者やメンバーの選定
責任者やメンバーの選定ではBCPを実行するための能力と知識をもったメンバーを選ぶことが重要です。能力と知識のある人員がいない場合には、BCP策定後に内容を共有した上で研修を行うなどして専門要員を育成するようにしましょう。
資金源の決定および確保
資金の調達先を決定し、確保することも重要です。緊急時には被害にあったシステムを再度購入したり、修理したりなどのコストが必要だからです。事前に緊急時の資金を確保しておくことで、実際に被害が出たとしても慌てずに済みます。
物資やソフトウェアの確保
BCPの運用には備品やソフトウェアの確保も欠かせません。通常時に使っている備品などが失われた場合の代替手段が必要なのです。同様に会社のソフトウェアも定期的にバックアップを取り、重要な文書や情報が失われないようにすることも大切です。
とくに失うと困る備品やソフトウェアをピックアップし、その代替手段を具体的に決められるようにしておきましょう。
利害関係者へのメリットを提示
顧客や取引先などの利害関係者(ステークホルダー)が享受する利益も考慮する必要があります。BCPをうまく運用するためには、関係者からの理解が必要だからです。
BCPの策定が利害関係者にとってメリットがあることを示せば、BCPを理解して実施しようとする意欲を引き出しやすくなります。
また、有事の際にBCPが効果を発揮できれば「緊急時でも誠実に対応してくれる」という印象づけができ、利害関係者との良好な関係性を維持しやすくなるでしょう。
②中核事業を特定する
BCPを策定する際には中核事業(コアビジネス)を明確にし、様々な影響を考慮することが重要です。
中核事業とは、自社の中で高い売上を出している事業のことです。中核事業は自社の予算に占める割合が大きいため、中核事業さえ守り抜ければ生き残れる可能性が高まります。
中核事業を特定する際には、緊急時における以下の項目について考慮するようにしてください。それぞれの影響が大きいほど自社における重要度の高い事業ということになります。
- ・利益・売上・マーケットシェアへの影響
- ・資金繰りへの影響
- ・顧客への影響(顧客との取引維持の可能性や顧客の事業継続)
- ・従業員の雇用・福祉への影響
- ・法令や条例や契約などに違反した場合の影響
- ・自社の社会的な信用への影響
- ・社会的・地域的な影響(社会機能維持など)
③リスクを洗い出し優先順位を決める
リスクに優先順位をつけ、最も重要なリスクに集中できるようにしておきましょう。いわゆるリスク分析です。リスク分析は以下3ステップで進めると抜け漏れを防げます。
- ①発生しうるリスクを書き出す
- ②リスクマッピングを行う
- ③優先すべきリスクについて詳細に分析・評価を行う
発生しうるリスクを書き出す
このステップでは、自然災害・大規模事故・テロ攻撃など、発生しうるリスクをできるだけ多く書き出しましょう。
リスクの大きさは考慮せずに思いつくままリスクを列挙してください。リスクを挙げることだけに注力することで抜け漏れを防ぎます。
そのほか、景気の悪化や法律・規制の変更など、外部からのリスクについても検討するとより経営の安定性が増します。
リスクマッピングを行う
リスク分析の第2ステップは、リスクマッピングを行うことです。各リスクがビジネスのさまざまな分野にどのような影響を及ぼす可能性があるかについて、マップを作成することで優先順位をつけやすくするのです。
その後、リスクマップを元にしてリスクに優先順位をつけましょう。どのリスクが自社の事業や財務にとって最大の脅威となるかを判断してください。
それぞれのリスクについて、発生する確率と発生した場合の影響を推定して重要度の高いものを探しましょう。とくに中核事業に大きな影響を出すリスクの優先度を高めると、自社の利益を最大限に守れるようになります。
優先すべきリスクについて詳細に分析・評価を行う
リスク分析の最後のステップは、優先順位をつけたリスクの詳細な分析と評価を行うことです。具体的にどのような被害が出ると想定されるのかを推定しましょう。
その際には、分析結果を文書などにして記録に残しておくことが重要です。分析結果を残しておくことで、新たなリスクが発生した場合にもBCPをスムーズに更新できるからです。
④具体的な対策を検討する
リスクを分析できたら、具体的にどのような対策を講じるかを検討していきましょう。
具体的な対策としては、重要機器・データのバックアップ、重要書類・資料の収集、通信機器の設定、セキュリティ対策の設定、発電機・バッテリーなどの電源のバックアップ、マニュアルの策定などが必要です。
以下3点に分けて考えると、抜け漏れなく対策を検討しやすくなります。
- ・ヒト
- ・モノ
- ・カネ
ヒト
災害が発生した場合、自社の従業員は身体的・精神的に大きな被害を受ける可能性があります。
そのため、BCPを策定する際には、災害発生時に従業員をどのように保護するかを検討しましょう。具体的には、避難場所の設定・避難所の準備・従業員の連絡先の収集などを行なってください。
モノ
BCPを策定する際には、どのような資機材をどのように保護する必要があるのかを検討してください。
具体的には、データのバックアップ・重要書類や資料の分類・大型機器の整理・建物の補強工事などが挙げられます。
カネ
災害による被害を最小限に抑えるために、会社の人や物だけでなく、会社の資本についてもBCPを策定する必要があります。
具体的には、保険契約の管理や財源の確保などを行なってください。自社の予算の中に、有事の際に使える資金を組み込んでおくと安心です。予算をすぐに確保するのが難しい場合には、積立方式で用意するのもよいでしょう。
⑤BCPの策定
リスクを洗い出して具体的な対策が決まったら、次はその対策を実行しやすくするための体制を決めていきましょう。
BCPの責任者・BCPを策定する委員会・緊急時に読むべきマニュアル・実践する訓練など、ここまで列挙してきた項目を再度検討し、最終的な計画を決定してください。
策定時に迷ったらBCPのテンプレートを活用しよう
BCPの策定をする際、イメージが湧かずに進められないこともあるかもしれません。こういった状況になった場合には、自治体などが公表しているBCPのテンプレートを活用してみてください。
たとえば、中小企業庁ではBCPの策定と運用について入門〜上級までのモデルを公表しています。まずは入門から始めて徐々にレベルを上げていくと、無理なく計画を立てられるでしょう。
また、愛知県では「あいちBCPモデル」として中小企業向けのBCPテンプレートを公表しています。こちらは簡易版と標準版の2つがあります。BCP策定に割ける時間やBCPへの知識レベルに応じて使い分けてみましょう。
テンプレートを参考にしながら、さまざまなリスクに備えられるBCPを策定してみてください。
BCPを策定する際のポイント・注意点
BCPの策定は、決して簡単な作業ではありません。BCPの実効性を確保するためには、ここまで紹介したように自社の現状業務を把握・分析し、リスクや検討項目を洗い出し、適切な手順を決めることが必要です。
緊急事態に陥った際に、きちんと機能するBCPを策定したいのであれば、以下2点について注意するようにしてください。
- ①自社の業務にあったBCPを策定する
- ②具体的に細かく決める
①自社の業務にあったBCPを策定する
自社の業務・環境・リスク・潜在的なリスクなどに合わせてBCPを策定することが重要です。
BCPの策定に迷った場合、他社のBCPや自治体が提供しているテンプレートを参考にすることもあるでしょう。参考にするのはよいのですが、策定したBCPが自社に適していなければ実際の機能を果たせないことがあります。
自社の業務にあっているのかを考えながら、内容をカスタマイズしてみてください。
②具体的に細かく決める
BCPは具体的かつ詳細な手順で策定する必要があります。具体的でないとどう行動したらいいかわからなくなってしまうからです。
緊急事態が発生した場合の対応だけでなく、緊急事態が発生する前・発生後・発生中の対応についても詳細に検討しておきましょう。そうすることで、緊急事態が発生しても、会社の利益を守るために必要なすべての手段を講じられるようになります。
また、実際にどこから備品を調達するのか、どのサービスを使うのかなども具体的に決めておくと安心です。
BCPを策定した後の運用のコツ
BCPは策定したら終わりではありません。実際に機能するものにしていかなければいけないのです。運用していく際には以下2点に注目してみてください。
- ①効果測定と改善を繰り返す
- ②社内に浸透させる取り組みをする
①効果測定と改善を繰り返す
BCPの有効性を測定し、必要に応じて改善することが重要です。そうすることで、BCPを最新かつ適切なものにすることができます。また、策定時には気がついていなかった潜在的なリスクや緊急事態への備えも強固になります。
とくにテンプレートを使用してBCPを策定した場合や、初めてBCPを策定した場合には効果測定と改善が重要です。最初から完璧な計画を立てようとするのではなく、徐々にブラッシュアップしていくことを忘れないでください。
効果測定をする際には、地震や火事などの避難訓練のように擬似的に訓練を行うのが効果的です。従業員には知らせずに社内放送などで緊急事態を知らせ、どの程度、BCP通りに動けるのかを試すとよいでしょう。
②社内に浸透させる取り組みをする
BCPの運用のもう一つのポイントは、BCPを社内に浸透させる努力をすることです。BCPを従業員に周知して理解させるのです。経営者も従業員も、BCPの目的や使い方を理解し、必要に応じて実行できるようにしておくことが必要です。
社内に浸透させる取り組みとしては以下3つが挙げられます。
- ①マニュアルの整備
- ②訓練の実施
- ③専門要員の育成
マニュアルの整備
BCPのマニュアルを作成し、従業員がその使い方を理解できるようにすることも重要です。
何をどのように行うかという詳細な手順だけでなく、BCPが有用である根拠や計画に従わない場合に起こりうる結果などについても理解させることで、より実効性が高まります。
マニュアルも効果測定と改善を繰り返して常に、最新のものにしておきましょう。
訓練の実施
マニュアルの作成に加え、訓練を実施し、緊急時に全員がBCPを理解し、実行できるようにしておくことが重要です。
実際に行動させてみることで、従業員が危機に対して迅速かつ効率的に対応できるようになり、かつ、対処すべき潜在的な弱点を特定できます。
専門要員の育成
BCPを管理する専門要員を育成することも重要です。専門要員は、BCPに精通し、それが適切に実施・維持されるために必要な知識と技術をもっている必要があります。
専門要員をBCPの責任者として任命しておけば、アルバイトなどで入れ替わりのある従業員を抱えていても緊急時の対応をスムーズに行いやすくなります。
BCPを機能させるには緊急時の連絡手段の確保が欠かせない
BCPを実行に移すには、緊急時でも安定的にコミュニケーションを図れるツールが必要になります。緊急時の連絡手段としておすすめなのがビジネスチャットツールです。
ビジネスチャットツールは電話回線を使用しないため、緊急時でも「回線が混雑して連絡ができない」という事態を防ぎやすいです。また、平常時でもメールや電話よりも気軽に連絡できる便利なツールとして活用できます。
BCPを実施するためのツールとして使うなら、機能が厳選されておりシンプルで使いやすいツールを選ぶようにしましょう。シンプルであれば操作が簡単で、慌てやすい緊急時でも使いこなせますし、コストも最小限で済むからです。
ちなみに『DiSCUS』はチャット機能に特化しているため、導入後に使い方に迷う心配もありません。BCPの一環として導入された実績もあります。
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まとめ|BCPを策定して緊急事態に備えよう
BCPの策定手順と運用時のポイントについて紹介しました。
BCPは緊急時の対応を定めるものなので、実際に機能するかは緊急時になってみないとわからないこともあります。しかし、マニュアルをブラッシュアップしたり、訓練を実施したりすることでより実効性のあるものが出来上がります。
手順に沿って策定するだけでなく、実際に活用できる形にするためにも計画を繰り返し改善しつつ、社内に浸透させていきましょう。