すべての企業に「社内ライター」という選択肢を… 当の本人が熱く語る、ライター正社員採用のススメ

すべての企業に「社内ライター」という選択肢を… 当の本人が熱く語る、ライター正社員採用のススメ

おつかれさまです! ナレッジスイート株式会社のT.I.です。

僕はナレッジスイート株式会社の正社員でして、マーケティングの部門に所属しています。

当社に入社する前は何をしていたかといいますと、出版業界にいて、長年にわたり雑誌や書籍の編集やライターの仕事をしていたんですね。

今はその経験を活かして、いわば社内ライター、社内編集者みたいな仕事をしております。

で、今回はこの社内ライターのお話です。

出版業界やWEB制作会社ならいざしらず、一般的な会社にライター…つまり文章を書くプロってあまりいないですよね?

当社も基本的には企業向けのビジネスアプリケーションを開発・販売する会社であって、文章とはあまり縁がありません。

しかし!

自分で言うのもナンですが、ほとんどの企業にライターは必要だと思うんです。

デザイナーはけっこう需要があるのに、ライターはほとんどない!

なぜ!? 悲しいっす!

そこへ来て、当社にはなぜ社内にライターが在籍しているのか?

社内ライターはどんな仕事をしているのか?

企業にライターが必要な理由は? …そんなお話をしていこうと思います。

KS社のクリエイティブ体制

ではまず、我々ナレッジスイート株式会社のクリエイティブ体制についてご説明しておきましょう。

当社の社員数は2022年9月時点で250名と、小規模とは言い切れませんが決して大企業と言える規模でもありません。

ですが、社内にクリエイターを多く抱えています。

WEBデザイナーも複数人いますし、広告デザインの経験者、ロゴが作れる人、もちろんコーディングができる人もいれば、今のところ僕1人ですがライターもいます。ちょっとしたイラストが描ける人だっています。

つまりWEBサイトを丸ごと1個作るくらいのことは、朝メシ前のメンツがそろっているのです。

普通、当社くらいの規模だとサイトや宣伝物の制作は外注ですよね。社内にこんなクリエイティブ体制を持っている企業は、そう多くはないでしょう。

もっと大きな企業だと「クリエイティブ室」みたいなものがあり、自社製品のクリエイティブはすべてそこで制作している…という所もあります。

しかしそんなケースでもデザイナーさんやコーダーさんの人数が多く、ライターが在籍しているケースは少ないかもしれません。ライター軽視ぴえん。

で、当社ではこのようなクリエイティブチームが、日夜以下のようなクリエイティブを一手に担っているわけです。

~社内クリエイティブチームのお仕事例~
 ・自社サイトや各自社サービスサイトの制作/更新
 ・パンフレットやチラシなど紙媒体の広告物の制作
 ・営業部門で使用するお客様向けの資料やチラシの制作
 ・自社サービスのUI(見た目)デザイン
 ・他社からのWEB制作依頼案件

そんな中で僕(ライター)はこんなお仕事をしています。

~社内ライターのお仕事例~
 ・上記各種制作物の原案(ワイヤーフレーム)作成
 ・上記各種制作物のテキスト作成
 ・プレスリリースの作成
 ・上記の校正作業
 ・SEO対策としての各種WEBコラムの執筆
 ・導入事例の取材/執筆

どうでしょう? 「あ、思ってたよりも文章を書く仕事ってありそうだね」と思っていただけたでしょうか?

社内にクリエイターがいるメリット

ではなぜ当社はこんなにクリエイターを正社員として採用しているのか…?

それは、マーケティング部門を統括するエライ人・某O氏の方針であり、その方針を後押しする稲葉社長の采配でもあります。

O氏に聞いてみたところ、当社にクリエイターが多く所属する理由は、大まかに下記のようなものだそうです。

 (1)元々当社ではWEB制作の仕事も受けている。
 (2)クリエイティブのクオリティを上げたい。
 (3)クリエイティブにおいて、スピードを重視したい。
 (4)コンテンツマーケティングへの注力。
(1)については、当社設立当初からWEB制作受注業をやっていました。今でもやっていますし、当社において一定の収益を挙げています。

これ、きっかけとしては大きい気がしますね。

これがなければ、当社にこれほど多くのクリエイターはいなかったかもしれません。

しかし現在、受託業務の分量に対してクリエイターの人数が多すぎるのも事実ですね。

実際僕は受託業務には関わっておらず、社内案件がメインです。

僕のような社内案件クリエイターが存在する理由は(2)~(4)です。

(2)の「クオリティ」には2つの意味があると思っています。

1つはデザインの美しさ・見やすさや、文章の分かりやすさ・正確さなどに代表される一般的な制作物の品質です。

これは外注の場合でも、業者を入念に選ぶことやある程度のコストをかけることで高度化させることができます。

もう1つの意味は、商品知識です。

外注の場合、特定の1人のクリエイターに自社の業務を何年も担当してもらうことは難しいでしょう。案件ごとに違うクリエイターが配置されることが多いはずです。

しかし、クリエイターを社員に迎えてしまえば、自社製品のクリエイティブに特化したプロを育成することができます。

この製品はこのような訴求の仕方が顧客に響く(逆にこんな訴求は響かない)、この製品のこのポイントは強調すべき(逆に強調すべきでない)…といった、製品ごとのお作法や統一表記などのルールが、社員なら自然と身についているのです。

外注の場合は、その都度こうした項目を説明してから業務にとりかかってもらわなければなりませんよね。

さらに上がってきた成果物を確認すると「あれ?こちらの意図が伝わっていない…?」などということになり、修正に時間や手間をとられることもあります。

こうした面倒な発注やリテイク業務をすっ飛ばして「あの製品について、こんなモノ作ってね」というツーカーでほぼ完璧なモノが出来上がるスピード感。それが(3)というわけです。

会議で決定された、あるいは誰かがふと思いついたアイデアがすぐにクリエイティブに反映できるというスピードのメリットは、時節に素早く対応する、商機を逃さない、競合に差をつけるなどの意味で高い価値があります。タイム・イズ・マネーです。

(4)は、僕が採用された特に大きな理由だそうです。
コンテンツーマーケティングとは、ごく簡単に言えば「おもしろい(役立つ)読み物を作って、それを自社商品の宣伝につなげる」という宣伝手法。

昨今、非常に多くの企業がこのコンテンツマーケティングに力を入れていますが、当社もその1つです。 大抵の企業ではコンテンツマーケティングを社外に制作発注して行なっているのに対し、当社ではほとんどを自社内のプロが制作しています。

社内にライターがいるメリット

社内にクリエイターがいるメリットについてはお分かりいただけたかと思いますが、今度はライターに焦点を絞ってみましょう。

社内に文章を書くプロがいると、どんな良いことがあるんでしょうかね…?

基本的には上記(1)~(4)のメリットが最大化される、という点が大きいと思います。

Webデザイナーさんが社内にいるだけでも、これらのメリットはある程度享受できます。

実際、「デザイナーさんだけは社内にいる」という中小企業もチラホラ見かけます。

そういう企業では、テキストはデザイナーさんや、ちょっと文章が得意な営業マンなどが書いているケースが多いようです。

はい、出ました! ライター軽視!

「デザインは特殊技能だからプロに任せたいけど、文章なら誰でも書けるから…」

そんな考えが、なぜか多くの日本企業にはびこっているんです。

ホワーイ! ジャパニーズピーポー!!

手前ミソですが、プロライターの書く文章と一般の方が書く文章は、すごく違うんです!

何であれ商用に使われる文章を書くことは、それもまた特殊技能なのです!

正直僕なんかはまだまだですが、やり手のプロライターが書く文章は、以下のような点で優れています。

 ・文法の間違いや誤字脱字、表記ゆれが少ない。
 ・読者にササる記事や文章が書ける。
 ・ボキャブラリーや表現方法が豊富。
 ・難解な事柄も、読者の視点に立って分かりやすく書ける。
 ・漢字とかなの使い分けや句読点の位置、黙読した際のリズムなどにも配慮した、読みやすい文章が書ける。
 ・コンプライアンスの観点から、書いていいこと、いけないことがある程度わかっている。
 ・スピードが速い。

このようなメリットを提供するプロライターが外部ではなく隣の席にいて、「はい、よろしくね」で仕事を頼める…それが社内ライターの利便性です!

またとある企業では、社長お付きのフリーライターを雇っているそうです。

その社長は自社サイトやSNSで積極的に社内・社外に自身の声を発信している方。

しかし社長だからといって必ずしもうまい文章が書けるわけではありませんし、きちんと多くの人に読んでもらえるネタを提供しなければなりません。

お付きのフリーライターは長年の付き合いですから、社長が1話せば10わかってくれるし、自社の個性を深く理解し、それを記事化するノウハウも持っているとのこと。

これって、いわば継続雇用のメリットですよね。

だったら社内ライターを雇っちゃえばいいのになー……と、僕なんかは思うわけです。

「でも、ウチの会社はライターに頼む仕事が多い月もあれば少ない月もあるよ。だったら外注ライターの方がコスパがいいんじゃない?」

…そんなお声もあることでしょう。

ご安心を。仕事が少ない月は仕事を創出すればよいのです。

すなわち貴社でも前述のコンテンツマーケティングを始めて、毎日バリバリ書かせましょう。

コンテンツマーケティングは、記事を頻繁に更新すると高いSEO効果を発揮します。

ところが外注でコンテンツマーケティングをやろうとすると、この頻繁な更新にもお金がかかってしょうがない!

社員なら、ハッキリ言って書かせ放題です。いや、もちろん労働基準法に則った範囲内で、ですけども。

いかがですか? 貴社の自社サイトや商品サイトの文章、あるいはカタログやツイッターの文章にも、気軽にプロの文章を使ってみたくはありませんか…?

まとめ

本稿では皆様に「企業に社内ライターを」という選択肢を提案しました。

実は僕がこのテーマで記事を書いた裏側には、社内ライターという制度が少しでも一般企業に広まってほしいという思いがあります。

なぜなら現在、世のライターが置かれている状況はけっこう厳しいものがあるからです。

日本にはライターを職業としている人が大勢いますが、その中には食べることもやっとな人がかなりの割合でいます。

2000年代以降、出版不況により雑誌媒体がバタバタと消滅していきました。
代わりにWebメディアが急激に増殖します。

Webメディアは一日に何本もの記事を公開しなければなりませんから、1つ1つの記事の制作に多くの予算を割けません。

そのため、原稿の買い叩きが始まりました。
現在、1文字0.5~1円程度で書いているライターがゴロゴロいるのです。
0.5円だと400字詰め原稿用紙10枚分書いても、わずか2,000円という計算になります。

かつて雑誌レギュラーを何本も抱えていたのに廃刊の連続で職を失い、Webに流れたもののWebのギャラではとても食っていけない…と泣く泣く廃業してしまったライターや、他の副業でやっと食いつないでいるライターもいます。

今、ライターがライターとして安定した暮らしを送ることが非常に難しくなっているのです。

ひと昔前なら編集プロダクション(出版物の制作会社)に就職すれば安定は保証されましたが、今は編集プロダクションの数が少なくなってしまった上、経営状態が安定している所となるとかなり限られてしまいます。

というわけで、僕のように一般企業に就職して月給で働く社内ライターという制度が定着すれば、それはライターにとって大きな選択肢の1つとなるわけです。

アマチュアとはちょっと違う、美しくて誰にでも伝わる文章を書く技能を持ったライターという職業に、少しでも関心をお持ちいただけたのであれば幸いです。