ぐうたらプロが教える「あきらめの校正テクニック5選」

校正が嫌いなあなたへ…
ぐうたらプロが教える「あきらめの校正テクニック5選」

おつかれさまです! ナレッジスイート株式会社の社員、T.I.です!

皆さんは校正という言葉、ご存じでしょうか?

校正は原稿やテキストをチェックして誤字脱字、内容の間違い等を見つけ出し、正す作業のことを言います。

実は僕、ナレッジスイート株式会社に入社する前は、出版業界で雑誌や書籍の編集・ライターの仕事を約20年もしていたんです。

当時は僕も毎日のように校正作業をしていました。

この校正という作業ですが、別に出版業界やクリエイティブ界隈に限らず、どんな業種でも発生しうるものですよね?

例えば、後輩が作ったプレゼン資料を先輩がチェックしたり。

発注書や納品書にミスがないかどうかを確認するのも校正と言えるでしょう。

最近は自社サイトやSNSを運営されている企業も多いので、そこでも何らかの確認作業は発生しているのではないでしょうか。

あるいは、他社に送る重要なメールを自分で書いて自分で見直すのも校正の一種です。

つまり、あまねくすべての仕事人にとって校正は身近な業務であり、校正のスキルをアップすることは仕事のクオリティをアップすることなのです。

しかもこの校正、失敗すると後々とんでもないトラブルを巻き起こすやっかい者でもあります。

そこで、まがりなりにも長年校正をしてきたワタクシT.I.が、皆さんに校正のテクニックを伝授いたしましょう!

…と、偉そうにタンカを切ったものの、僕は校正が大嫌いです。

だってめんどくさいし、退屈じゃないですか!

細かい文字を丹念に1つ1つチェックして間違いを見つけるなんて、性格悪いし!

しかも重要な原稿であればあるほど、校正者には重い責任がのしかかるわけです。

責任が付きまとうものは例え給食当番だってやりたくなかった僕にとって、正直、苦痛でしかありません。

でも、どうしてもやらなきゃならないのが校正です。

だってだって…誤りを排除するっていうのは、大事なシゴトなんですもの……。

大事なシゴトと言われてしまっては「はい、そうですか…わかりました…」という言葉しか返せなくなるのがサラリーマンの悲しいSa・Gaですね。

ロマンシングです。いや、フロンティアかもしれません。 ともあれ今回は、僕と同じように校正が嫌いな人・苦手な人に向けた、それでも最低限これだけはやっておくべき校正テクニック集です!

テクニック① あきらめて効率を重視すべし!

まず最初にお伝えしておきたいのは、カンペキな校正なんてほぼ無理! ということです。

20年やってきた僕でもやっぱり見落としはありますし、これからも見落としつづけるでしょう。

世の中には校正を職業とされている方々もいらっしゃいます。

そういう方々はもう、僕なんか比べ物にならないほどの神のような校正スキルを持っています。

知り合いのプロ校正者は「ゲラ(校正用の試し印刷)を一目見た瞬間、間違いの箇所がプラネタリウムのように光って見える」と言ってました。

ちなみにこれは校正者あるあるだそうです。どんな能力者集団だよ!

そしてそんな達人でもやっぱり、5~6ページの文章ならまだしも数十ページ、数百ページに及ぶ書籍や資料においては100%完璧な校正はムリ」と言ってました。

人間が書いたものを人間が確認する以上、ミスがまったくないなんてことはほぼありえないのです。

つまり校正とは、100%の完成をもって終了する業務ではありません。

いわば「なるべく100%に近づけるようにがんばって、どこかであきらめる業務」です。

例えば15ページ程度のプレゼン資料を、5人の社員で10時間かけて徹底的に校正する…などという行為は、ほとんどムダです。

それでも間違いがある可能性はゼロにはなりませんし、むしろ大勢が修正指示を入れまくることで混乱をきたし、元々なかったミスが生まれてしまう可能性すらあります。

言うまでもなく1人より2人で見た方が精度は上がります。

しかし校正は時間や人数をかけようと思えば無限にかけられてしまう業務なので、入れ込みすぎて過剰なコストを消費するケースも多いのです。

もちろん最善を尽くす必要はありますが、最終的にはどこかで割り切り、あきらめ、もしミスが出たら責任をとる覚悟を持つことが校正です。 よって最も重視すべきは効率なのです。だからこそ、本稿で紹介する「最低限やるべきこと」が非常に重要なわけです。

テクニック② ぐっすり寝るべし!

百万のテクニックをも凌駕する最強の校正術……それは睡眠です!

これは自分の経験から言えます。本当に、マジメな話です。

僕も若いころは出版業界でいろいろムチャな働き方をしました。

会社に1週間いつづけたこともありますし、休日返上で100連勤なんてこともありました。

でもそんな働き方をしているとですねー、目も脳みそもまったく機能しません。

10分も仕事をすると頭がボーッとしてきて「……ハッ! あれ!? 今、1時間もボーッとしてたの!?」の繰り返しで一日が終わり、なんだかスタンド攻撃でも受けたような気分になってきます。

よくないですね。このような、あばれる君とハナコ岡部の区別もつかないような状態では、正確な校正など望むべくもありません。

実際、徹夜明けの校正で見落としが多発し、上司にこっぴどく怒られた経験が何度もあります。

校正の前日はとにかくよく寝て、よく休んでください。集中力がぜんぜん違ってきますので。

それから校正は一日の疲れや眠気が出てくる午後は避けて、なるべく頭が冴えている午前中に済ませてしまうことをおすすめします。 精度の高い校正をするには、コンディション作りも超・重要なのです。

テクニック③ ヤバイ情報はとにかく優先して確認するべし!

原稿には「許されるミス」と「許されないミス」があります。

企画書で「この夏の新商品は…」と書くべきところを「このナッツの新商品は…」と誤記してしまったとしましょう。

このケースは、読んだ人の誰かが髭ダンの『SPY×FAMILY』の主題歌を思い出してしまう可能性はあるものの、さほど重大な問題を招く類のものではありません。

間違えると本当にヤバくて、笑えないトラブルを起こす可能性があるのは、以下のような情報です。

・人名
・社名
・電話番号
・住所
・メールアドレス/URL
・商品名
・商品スペック
・日付/時間
・金額
・権利表記(いわゆるマルCクレジット)
・引用文および引用元の表記

 など…

つまり、間違ったまま多くの人の目に触れることによって、誰かにとって失礼に当たる表記、あるいは個人や企業の利害に直結する情報がヤバイわけです。

例えば問い合わせ先の電話番号を間違えると、お客さんが問い合わせできないばかりか、無関係などこかの個人宅や会社に間違い電話がかかりまくる可能性もあります。

いろんな人に迷惑がかかりますね。これはヤバイです。

特に校正にかけられる時間が少ない時、日本語の文法や句読点の位置を確認するのと同列にヤバイ情報を確認するのは危険です。

ともかくヤバイ情報の確認を優先し、そこに労力をかけましょう。

最悪、日本語は間違っていても「恥ずかしい」で済むわけですから。

ちなみに申し上げておくと、単語や助詞の誤記、表記の揺れ、英語の綴りミス関係は、Wordなどのテキストエディタに搭載されている校正機能である程度発見できます。

これらを使って時短するのも良いでしょう。

テクニック④ 「読み合わせ」を活用するべし!

僕が編集時代に最もお世話になったテクニック…それが読み合わせです。

これは、本来1人で黙々と行なう作業である校正に「仲間」を巻き込み、校正力をアップさせるテクなのです。

『アイスクライマー』ばりの協力プレイというわけです。あ、あれは対戦か…?

特に先述のヤバイ情報を確認する時や、長い引用文など2つの原稿を比較確認しなければならないケースで威力を発揮します。

やり方はカンタン。以下、自社の電話番号の確認を例にとってご説明します。

①相棒を用意する

 隣の席の人でも誰でもいいので、「ごめん、手伝って!」と協力をあおいでください。ここではあなたの日頃の行ないや人徳がモノを言います。

②信頼できる参照元を用意する

 自社の電話番号が記載された、なるべく信頼度が高い参照元を用意してください。例えば長年公開されており実際に問い合わせの電話がかかってくる自社サイトや、印刷されたパンフレット類、名刺などです。複数用意できるとさらにカンペキです。

③読み上げる

 2人のうち1人が電話番号を声に出してゆっくり読み上げます。「ゼロ、サン、ゴー、ヨン…」といった具合です。その声を頼りにもう1人が原稿を1文字ずつチェックしていきます。これが「読み合わせ」です。より万全を期すなら、読む人と確認する人を交代しながら、複数回行ないます。

1人で目で追う校正と比べ、「別の人が読み上げる」という行為を付加するだけで校正の精度は驚くほど向上します。

余談ですが電話番号やメールアドレスについては、原稿を見ながら実際にかけてみる、送ってみるという確認方法もあります。

特に他社の電話番号などは絶対に間違ってはいけませんから、原稿に記載の番号に実際に電話をし、つながったら「これこれこういう事情で、間違いがあってはいけないので確認の電話をさせていただきました」と申し出れば、先方も快く対応してくれます。 くれぐれも電話がつながったらガチャ切り…などという無礼はやめましょう。

テクニック⑤ デカイ文字こそよく見るべし!

これは出版業界でよく言われることなんですが、人間、デカイもの・目立つものほど見落とします。

なぜかはよく分かりませんが、「こんなデカイ文字、間違えようがないだろう」という安心感が働いてしまうのでしょうか。

『逃走中』で、巨体のプロレスラーが意外としぶとく生き残り、若くて小柄なアイドルが早々に捕まってしまう現象に似ているかもしれません。いや似てませんでした、すいません。

それと大きな文字は一目で全体を認識できず、目で追う必要があるので、小さな文字の確認とはちょっと勝手が違うことも一因ではないかと個人的には思っています。

ともあれ、大きな文字、大きな写真などにこそ注意が必要です。

実際、ページの中で一番目立つ大きな文字に大変な誤字があり、何人ものチェックをすり抜けてそのまま印刷・発行されてしまった事例を僕は何度も目の当たりにしました。

プレゼン資料の表紙にドーンと大きく書かれたタイトル、誤字はありませんか?

サイトの最上部にドーンと置かれているメインビジュアル、権利関係は大丈夫ですか? 校正の最後の仕上げに、全ページの大きな文字だけを一通り確認してみるのも良いやり方でしょう。

まとめ

いかがだったでしょうか。

「校正にはあきらめが必要」と申し上げたものの、決して手を抜いていいというわけではありません。

20年やった僕が断言しますが、校正は本当に重要な業務です。

誤字は誰かに大変な迷惑をかけることもありますし、莫大なお金の損失につながることもあります。訴訟問題にだって発展しかねません。

だからこそ「嫌いだから…」といってテキトーに流すのではなく、最低限重要なポイントだけでも押さえて集中し、校正の失敗を避けてほしいのです。

最後に付け加えますが、本文中でも触れたように専門家の校正テクニックは本当に高度です。

モチはモチ屋とでも言いますか、もしも状況が許すのであれば校正を外注するのも1つの有効な手段です。

ネットで検索したり、他社の人に聞いたりして、評判のいい専門業者に依頼するのもいいでしょう。

また最近は「ランサーズ」や「クラウドワークス」「ココナラ」などに代表される、いわゆるクラウドソーシングサービスが発達しています。

こうしたサービスの活用で、比較的安価に校正作業を外注することもできます。

「あーせいこーせい」とうるさく言いましたが、校正テクニック集、これにて終了です! どうかこの記事に誤字脱字がありませんよーに!